星と分析ノート
私はそれの大切さを自覚していなかった。それは40年余続いている私の習慣:なんでもノートに書き綴るということ。ふと浮かんだこと、夢で見たこと、直視したくない自分の恥ずかしさ、それについての思索や対応策を書いていく習慣があった。ノートは数年おき、誰にも見せず廃棄していったため、今はほとんど残っていない。
精神科医で分析心理学の提唱者だった C.G.ユングは、人の心についての無意識、集合的無意識、ペルソナ、コンプレックスなど、今では一般用語になっている言葉を生み出した人物だ。彼はノートに自分がみた夢やヴィジョンを書き記しこれを「無意識との対決」と呼んだそうである。そのユニークな自己実験の記録が『黒の書』『赤の書』として出版されていること、そして彼が占星術に通じておりホロスコープの心理学的な分析をしていた記録があるということを一昨日知った。
ただ書き綴る、それがどんなに私を支えてくれたか計り知れない。ノートに書いていたから正気でいられた、そんな時期もあった。誰にも言えないこと、伝えたくてもどう伝えればいいかわからない感情が詩のように溢れることも多かった。たまに数ヶ月途切れることもあったはずだが何十年も続いてきた、私だけに意義のあることだった。そうしていつの間にか培われた自己分析と感情の力が、占星術の分析と応用に大きく役立つことを、私は自覚していなかった。

現代インド占星術は人生の目的を探究する超科学で、形而上学・神智学の領域に重なる。どの技法にも「例外として〜の場合は・・」といった、他の条件が重なるとその技法から外れる例外がある。どんな場合にも通用するような方法論は存在しない、という現実に即した学問なのだ。私はそこに、生命や宇宙に対する礼節のようなものすら感じるが、ゆえに、鑑定するときには常に理論と直感のバランスが取れた判断が重要になる。
基礎理論を詰めると直感が働く段階になる。そのポイントで沸いたイメージを大切にする。そのような分析・統合の切り替えや匙加減は、書き綴ることによって深まったという自覚がある。自分を理詰めて説明しようとしても破綻し、感情でまとめようとしても腑に落ちない・・という体験を繰り返し繰り返し、言葉にしてきて、私の内に蓄えられたと思う。
これからは自信を持って、私の表現を楽しみながら人の心をサポートしていくつもりだ。